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「会津型」をジャパニーズカルチャーのけん引役に!喜多方市の誇る文化を現代に生かす取り組みが活発化

会津藩の経済を支える在郷町として栄えた喜多方市には、『幻』と呼ばれる名産品がありました。それはかつて、着物の柄を染めるために重要なツールとなっていた染型紙です。喜多方市で製作された染型紙は「会津型(あいづかた)」と呼ばれ、現在はまちづくりや市のブランド力強化に活用する動きが活発化しています。

喜多方市では歴史文化資源の持つ創造性を地域・観光・産業振興に生かし、地域課題の解決につなげる「文化芸術創造都市」の推進に取り組んでいます。『幻の染型紙』とも呼ばれる会津型をはじめとした文化資源活用の事例などをご紹介します。

東北のファッションに欠かせないツールだった会津型

布地を染色する際に使い、着物などに模様を付けるために役立てられてきた染型紙。喜多方はかつて、伊勢白子、京都、江戸と並ぶ染型紙の生産地として知られていました。会津型は会津藩から染型紙商と兼業漆器業の公認を受けた当地の小野寺家で、五代に渡って製作されました。

幾何学模様や絣(かすり)、縞(しま)のほか自然を題材にした柄など、精巧に表現されたデザインが特徴的。東北一円に販路は広がり、東北地方の着物文化の発展・拡大に一役買いました。

布地
染型紙
染型紙

染型紙は、柿渋で貼り合わせた和紙に彫刻刀で柄を彫ってつくられます。良質な和紙や柿渋が豊富な地域性も重なり、喜多方では100年以上にわたりさまざまな種類の会津型が生み出されました。しかし合成染料や洋服の普及といった時代の流れによって衰退し、昭和10年に幕を下ろしました。

幻の染型紙とも呼ばれていましたが、昭和57年に小野寺家の蔵から約3万7000点の型紙が見つかり、その後大量の型紙や彫刻刀などの道具類、帳簿や見本帳が市に寄贈されました。型紙や資料は福島県重要有形民俗文化財に指定され、顕彰が図られています。

わがまちの文化財として、多分野での展開を図る

会津型の振興・発信をめぐり、喜多方市は令和2~4年度に「きたかた『会津型』ミュージアム事業」を展開。会津型が多くの分野で幅広く活用され、まち全体がミュージアムのようになる姿を理想として、さまざまな取り組みが繰り広げられました。

具体的には市内で、会津型の展覧会やワークショップなどを含むイベントを開催。ワークショップでは現代に至るまで喜多方で創作され続ける地場産品の漆器に会津型のデザインを施す箔押し体験もあり、好評を博しました。

漆器

リーフレットでは会津型の商品の購入先を案内したり、会津型を使ったデザインが見られるスポットを紹介。まちなかで学生や家族連れなどが会津型のデザインを探してめぐる姿も見られました。

次世代を担う地元高校生にも、座学や型彫り体験などの講座を通じて会津型に関する知識を深めてもらいました。生徒たちは会津型デザインの屏風やプロジェクションマッピングを制作。イベント会場でも披露されました。

ほかにも伊勢型紙や紅型、漆芸など伝統工芸の活用や継承事例を通し、会津型の活用の可能性を検討する勉強会の開催、会津型公式Instagramの開設なども行われました。

デジタルデータで会津型デザインの拡散も

令和5・6年度には会津型デザインの活用などをテーマに、市民参加型事業やオープンデータの公開などを実施。さらに幅広く市内外の人たちが会津型の魅力に出会うような企画を、仕掛けていきました。

オープンデータは市HPに、許諾条件フリー版のデザイン54点を掲載。許可なしでダウンロードして賞状用の台紙や名刺・カードの模様として活用することができます。

掲載されているのは「さくら」「風車」「稲妻と団扇」「瓢箪」「船、竹、角」などをあしらった紋柄・ワンポイント柄のデザイン。貼り付け後に色を変えることも可能です。多数の人が手軽に会津型デザインを活用できるシステムとして、好評を博しています。

紋柄

市民参加型事業では、蔵づくりの文化を伝える施設・喜多方蔵の里の展示内容の見直しに際して会津型デザインを活用した企画を地元高校生が提案。生徒らは会津型を使った藍染め作品制作などをしている「会津型研究会」メンバーや、伊勢型紙の職人の指導を受け、染め上がりを紹介する資料やレプリカを制作しました。

また、持続した会津型の活用をテーマにした講演や座談会なども開催。柿渋で貼り合わせた和紙を彫って型紙をつくったり、会津型で型染めをしたりといった体験ワークショップや、スキャン・整理作業を通じて文化財保存方法を学ぶブースも並びました。来場者に好きな会津型の柄を投票してもらう「会津型推し総選挙」も企画。多数の反響が寄せられました。

そのほかにも令和5・6年度には、以下のようにさまざまな施策を展開しています。

  • 実物と同様に型を彫られた表紙を施した、触って楽しめるオリジナルカタログを制作
    オリジナルカタログ
  • 市内小中学校や公民館での出前講座
  • 型紙の活用に関する調査研究、デジタルアーカイブ化に向けた準備
  • 会津型を使った柄がどのように染め出されていたか、東北地方各地で調査。ほかの型紙産地も視察
  • 会津型グッズの開発と試験販売

市民やクリエイターの取り組みを支えるコーディネーター組織も始動へ!

会津型をはじめとする文化資源を教育、産業、観光などの分野と結び付けるのにカギとなるのがアーティストや職人、デザイナーなどクリエイティブな活動を生業とする人たちの存在です。

喜多方市の文化芸術創造都市構想ではクリエイターが市内の文化資源と公共施設、各団体、企業、福祉、学校に所属するメンバーをつなぐ役割を果たす流れを想定。文化資源は会津型だけでなく、ラーメンや地酒などの食文化、蔵のまちの景観、国指定重要文化財の新宮熊野神社長床といった創造物なども含みます。

文化芸術創造都市イメージ

このように郷土の歴史文化資源を地域課題解決や振興に役立てる活動を支える組織として、「創造的な取組みを構想してみる会議」も立ち上がっています。令和5年度は文化芸術創造都市構想の周知や各分野の連携に向け、市職員がアイデアを出し合い事業計画案なども検討。出されたアイデアをもとに、会津型イベントの中でカフェシアター空間を出店するという成果も挙げています。

令和6年度は、市民や市にゆかりのある人たちも会議メンバーに加われるように対象を拡大。そして地元高校生が会津型の歴史を伝える展示内容を考える取り組みに、メンバーも参加。生徒と一緒にデザイン学の研究者らの指導を受け、展示のコンセプトや計画を練り上げ、現代に受け入れられやすい発信法を模索しました。

文化芸術創造都市実現に向けた取り組みが進められていく中、同会議の動きも今後活発化することが予想されます。クリエイターと市民をつなげ、時に一緒に汗を流したりフォローしたりと、力強くサポートする組織へと成長する日も近そうです。

着実に現代に残された膨大な資料。会津型の可能性に期待!

会津型の資料は一軒の型紙商が残した規模としては、膨大な量と評されます。現代に残る数々の貴重な資料と市民・行政・クリエイターの連携した取り組みにより、今後も顕彰や周知の輪が広がっていくでしょう。

カギとして、染型紙の認知度アップも挙げられます。かつて着物のデザインに欠かせなかい道具だった染型紙の日本文化における価値が高まれば、インバウンド客からも熱い視線が向けられるようになります。会津型が日本文化ブームの主力要素に躍り出る可能性も秘めつつ、喜多方市民たちの挑戦は続けられています。

また、前述した通り喜多方市内にはほかにもラーメンや地酒などの食文化、新宮熊野神社長床など文化財、伝統工芸の漆芸といった文化資源がそろっています。豊富な資源を活用して文化の薫り高いまちづくりが進む喜多方市から、今後も目が離せられません。

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